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はじめに
人はなぜ働くのか。このことを真摯に考えたアメリカの心理学者にハーズバーグという人がいます。彼は職務態度に関する膨大な先行研究を調査し、一つの仮説を立てました。そしてその仮説が正しいかを確かめるために調査方法を設計し、実際に面接調査を行いました。1959年にその結果は、「The Motivation to Work(邦題『仕事と人間性』北野利信訳)」として発表されています。この著書で提示されたのが、看護管理の教科書には動機づけの部分でマズローやマグレガーと並んで登場するハーズバーグの「二要因理論」です。彼の理論には、人間は仕事を通じての自己実現の欲求をもっているという人間観が感じられます。
ハーズバーグの略歴
ハーズバーグは1923年にマサチューセッツ州のリンで生まれました。1939年にニューヨーク市立大学シティカレッジ(CCNY)に入学しましたが、途中、第二次世界大戦中には軍曹として従軍し、ダッハウ強制収容所に最初に入った解放者の一人となりました。戦後ニューヨークに戻り、1946年にCCNYで学士を取得し、1950年にはピッツバーグ大学で心理学の博士号を取得しました。
1972年に招聘されてユタ大学経営学教授となり、引退するまで そこで過ごしています。2000年に76歳で亡くなりました。
二要因理論(動機づけ衛生理論)とは
この理論は、それまでの満足の反対は不満という単一スケール上の全体的職務満足を測定する方法とは違い、満足と不満は別個の連続体において作用するが故に、両者は相反するものでないと考えます。この仮説を実証的に調査した結果が1959年の著作にまとめられています。
まとめ
部下の仕事に対するモチベーションを高めるには部下の仕事に対する不満につながる要因を取り除くだけでは不十分で、仕事の充実化(job enrichment)を重視すべきだとハーズバーグは提唱しました。この提言は、企業組織だけでなく看護組織で部下を持つ人々に対して、職場のマネジメントを考える際に大きな示唆を与えました。1968年にハーバード・ビジネス・レビュー誌に掲載されたハーズバーグの『One More Time: How do You Motivate Employees?』は、抜き刷りが100万部以上売れています(この抜刷りは今も購入することができます)。
スタッフの動機づけで悩んだ時、ハーズバーグの提言には気づかされることが多いのではないかと思います。
参考文献
大橋岩雄(1969)「HerzbergのM-H理論について:モラールとの関連について」『大阪府立大学紀要』17巻,29-48頁,大阪府立大学
宮田矢八郎(2001)『経営学100年の思想』163-171頁,ダイヤモンド社
スチュアート・クレイナー著 嶋口充輝監訳 岸本義之・黒岩健一郎訳(2000)『マネジメントの世紀 1901〜2000』139-149頁,東洋経済新報社
スティーブン P. ロビンス著 髙木晴夫訳(2009)『【新版】組織行動のマネジメント』78-86頁,ダイヤモンド社
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