目次
はじめに
前回のblogで、「チーム」という視点から訪問看護ステーションの経営を考えるのがよいのではないかということを書きました。では、チームというのはどういうものなのでしょうか。スポーツのチームなどを想像する方が多いのではないかと思います。仕事の場におけるチームについて考えるとき、多くの気づきを与えてくれるのが、今回紹介する以下の本です。
チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ
本書を、訪問看護ステーションが機能するとはどういうことか、という問いを持って読んでもいいのではないかと思います。訪問看護管理者が自分のステーションをチームとして捉え、そのチームの活動が豊かになるためにどのような点に注意し、何をしなければならないのか、そういった問いの答えにつながるヒントが、チーム研究の第一人者によって書かれた本書にふんだんに盛り込まれています。
チームを「チーム」という状態ではなく「チーミング」という動詞で捉える
訪問看護で働く看護師を取り巻く状況は刻一刻と変化しています。利用者のご自宅という環境は、病院のような治療のために整えられた空間ではありません。看護師はそれぞれの場所でサービスを提供しています。利用者の状態は常に一定ということはありません。働く看護師自身の状況も変わるでしょう。利用者数の増減はありますし、ステーションで働く看護師の出入りもあるでしょう。このような変化の中で働く人たちを看護管理者はどのようにマネジメントしていけばいいのでしょうか。チームを常設の固定したグループと考えるのではなく、もっと動的に変化していくグループと捉えようというのが本書の主張です。以下のような記述があります。
「チーミングは動詞だ。それは、境界のある固定された集まりではなく、動的な活動である。効果的なチームのデザインや構造によってではなく、チームワークという考え方やその実践によって、主に生み出されるものでもある」 本書25頁
自ステーションを「チーミング」という動詞で捉え直すと、見えてくることがいろいろあるのではないでしょうか。
「チーム」がパフォーマンスを上げ、魅力的な職場であるには「率直な会話」が必要である。
では、職場を取り巻く環境が大きく変化していく中で「チーミング」という動的な状態を維持発展させるにはどうすればいいのでしょうか。大前提として、コミュニケーションが必要である、と本書の著者は述べます。そしてチーミングにはいくつかのメリットがあり、大きく分けて組織のパフォーマンスが上がることと、魅力とやりがいのある職場環境になることの2つを紹介しています。
しかしこのチーミングを成功させるには様々な障害があることにも筆者は注意を向けています。チーミングを成立させるための土台となる「コミュニケーション」を阻害する、認知的、対人的、組織的な要因があることを述べ、それらに対処するためのヒントを事例を交えて紹介していきます。
まとめ
本書を読み、私は「チーミング」を成り立たせるには「率直な会話」が非常に重要であると感じました。では、どうすれば率直な会話ができるのか。本書の著者が書いた『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』も読んで、さらに考えを進めていきたいと思います。
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