本の紹介『ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』

目次

ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

はじめに

 本書は日本では2018年に翻訳され出版された本です(原著は2014年の出版)。このblogでは、ティール組織がなんであるかについては説明しません。注目したのは、ティール組織の例として取り上げられた事例の中に、訪問看護ステーションの運営を考えるヒントになる組織が出てくるのです。『ビュートゾルフ』という組織です。非常に有名なので既にご存知の方も多いかと思います。本書94頁では以下のように紹介されています。

「ビュートゾルフはヨス・デ・ブロックと一組の看護師チームによって、2006年に設立された非営利組織だ。現在はオランダ最大の地域看護師の組織として、高齢者や病人の在宅ケアサービスを提供している」

 オランダと日本ではヘルスケアに関する制度や習慣が異なっていますので、ビュートゾルフの事例をすぐに日本に導入することは非常に困難であると思います。しかし、ビュートゾルフの事例と自ステーションの状況を比較することで、より良いステーション経営のヒントが得られるのではないでしょうか。
 では、ビュートゾルフがどのような組織であるかをみていきましょう

ビュートゾルフとはどのような組織か

 ビュートゾルフ(オランダ語で「地域看護」という意味)では、看護師は10〜12名のチームに別れています。そしてその各チームは、細かく割り当てられた担当地域に住む50名程度の患者を受け持っています。そして看護師たちはケアサービスを提供するだけではく、そのほか必要なこと(例えばシフトをどうするのか、どこにオフィスを借りるのか、採用をどうするか、業務管理をどうするかなど)をチームで行います。設立から7年後には7,000名の看護師に対し、本社スタッフは30名で現場のサポート業務を担っているそうです。
 ビュートゾルフは同業と比較すると、欠勤率や離職率が極めて低く、利用者満足度も高い上に生産性も良いそうです。
 本書では「ティール組織」の特徴である「自主経営」を成り立たせる、組織構造、マネジメントスタイル、組織慣行の事例としてビュートゾルフが取り上げられています。

日本の訪問看護ステーション経営に立ち戻って

 繰り返しになりますが、ビュートゾルフの事例を日本に導入することは非常に困難であると思います。しかし、訪問看護ステーションの経営を考えるときに有用な問いをビュートゾルフの事例は投げかけてくれます。例えば、以下のような問いを立てることができます。

  • 看護師がやりがいを持って働くことができるケアとそれ以外のことに費やす時間の比率はどのくらいが良いのか。そしてその比率を達成するためにどのような経営上の工夫が必要なのか。
  • 訪問看護ステーションの出店スピードをはやめ、ステーション経営を安定させるにはどのような採用・教育・管理体制を築くべきなのか。 

 ビュートゾルフは本社機能が極めて小さいことが特徴としてよく挙げられます。これを逆に言えば、現場で様々なことを行っているということになります。看護師はケアに集中したほうがいいのでしょうか。それともケア以外の様々なことしたほうがいいのでしょうか。
 もし、自ステーションの多店舗化を考えたとき、ビュートゾルフの設立7年で看護師が7,000名ということのすごさを感じることができるのではないでしょうか。1年間で1,000名の看護師を採用し、新しい訪問看護ステーションを100店舗出店しているようなイメージです。新規出店を加速させ多店舗の経営を行うとき、どのように採用や教育が行うのがいいのでしょうか。そして複数ある店舗はどのように管理していくのがいいのでしょうか。
 このようなことを考える比較対象としてビュートゾルフの事例は有用ではないでしょうか。

まとめ

 今回のblogはティール組織の事例として登場した「ビュートゾルフ」について取り上げました。
 本書を読んで私は、訪問看護ステーションの経営を考えるとき「チーム」という視点でひとつひとつのステーションの動きを見ることがよいという考えを持つようになりました。
 次回のblogではチームについて考えることに役立つ本を紹介したいと思います。

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