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はじめに
訪問看護という仕事を考えたときに、関係する仕事のひとつに訪問介護という仕事があると思います。看護という仕事と介護という仕事、これらの利用者になる方々は同じ人であることもあるでしょう。例えば、週3回訪問介護をお願いしている人が、週1回訪問看護を利用している状況です。
訪問看護に近接する領域として、訪問介護とはどのようなものか、そしてそこで働くマネージャーたちはどのような悩みを抱えているかを知ることは、訪問看護管理者の仕事を考える上でも有用であると思います。
本書「介護人材マネジメントの理論と実践」は、日本の介護サービスの現状と問題点を明らかにし、介護人材をマネジメントする人たちに向けた明るいメッセージを提供しています。
一読後改めて本書の英語タイトル「HRM to Make Care People Creative in Uncertain Job Situations 」を読むと、このタイトルが本書の内容を一文でよく表していると感じます。
著者について
本書は著者の博士論文をもとにしています。著者の菅野雅子氏は、2000年代前半から介護人材に関する調査研究に関わることになったそうです。そして2010年代半ばからはどこの事業所も人材不足で大変な状況がひしひしと伝わってくるような中、その一方で人材が定着し安定した現場も少なからずあって、職場レベルのマネジメントに違いがあるのではないかと考えたのが、この研究のきっかけであったと書いています。
介護の仕事特性は「高い不確実性」にある
介護の仕事は大きな括りで言えば、サービス業と言えると思います。人が人に対してサービスを提供するため生じる難しさについて、本書は様々な角度から検討し、介護の仕事の重要な特性は「高い不確実性」にあるとしています。この「高い不確実性」というのは訪問看護の仕事にも当てはまるのではないでしょうか。
高い不確実性の中で働く人たちが、活き活きと仕事を進めるにはどうすればいいのか。本書ではマネージャーがどのように動けばよいのかについて研究を行なっています。
介護人材をマネジメントするマネージャーは「役割と段取り」を明確にし、「変化」に向けて職場メンバーを「共振」させる
この章のタイトルは私の本書結論に対する理解です。介護の仕事にある「高い不確実性」は、これを0にすることはできません。そのため、事前に決められる「役割と段取り」は明確にすべきだ、という本書のメッセージは訪問看護にとっても有用であると感じました。
また、「高い不確実性」に対応して仕事を進めていくためには、自身も「変化」させなくてなりせん。この変化は大きいことだけでなく、小さなことも含まれます。
そしてこの変化は、チームメンバーの相互作用によって生み出される必要があります。つまりマネージャーはメンバー同士が「共振」する場を設定し、「変化」を促すのです。
まとめ
本書は介護人材マネジメントについて書かれています。しかし、訪問看護管理者の仕事を考えるのにとてもよいきっかけを与えてくれると思います。
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