本の紹介『シュンペーター ー孤高の経済学者ー』

目次

「イノベーション」という言葉を見たり聞いたりしたことはないでしょうか

 この言葉は20世紀の前半に活動した経済学者シュンベーター(1883-1950)によって初めて定義がされたと言われています。「イノベーション」は彼の経済理論の重要な要素として使われており、現代においては経営学の分野で使われる言葉となり、日常生活においてもニュース等で聞くこともあるのではないかと思います。
 私は訪問看護管理者は「イノベーション」を起こす存在であると考えています。では、そもそも「イノベーション」とはなんなのでしょうか、そして誰が起こすものなのでしょうか。そんなことを考える時、本書は非常に有用であると思います。シュンペーター自身がドラマチックな人生を歩んでいるので、本書を物語として読んでも面白いと思います。

     シュンペーター ー孤高の経済学者ー

 特に、本書Ⅳ「シュンペーター の思想と理論」の(1)「経済理論」は、シュンペーター が構築した経済理論について、他の研究者の主張や当時の時代背景も踏まえつつコンパクトにまとまっています。

イノベーションとは新結合である

 イノベーションには新結合という訳語が当てられています。ある何かと何かを組み合わせて新しいものをつくりだすことが、イノベーションの基本的な定義です。そしてシュンペーターはイノベーションを5つに分けて説明しています(本書128-129頁より)。

  1. 新しい財貨、あるいは新しい品質の財貨の生産
  2. 新しい生産方法の導入
  3. 新しい販路の開拓
  4. 原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
  5. 新しい組織の実現

 そして、シュンペーターはイノベーションを遂行する経済発展の担い手を「企業者」としています。なにもベンチャー企業を立ち上げる起業家や研究者だけが、イノベーションの担い手ではないのです。
 訪問看護ステーションの働きを考えてみると、これまで病院でしか提供されなかった看護が、利用者の自宅で提供されるようになったという点において、イノベーションであるということができると思います。訪問看護師は病院と違って利用者一人ひとりの住環境に合わせて看護を提供します。そして、訪問看護管理者はスタッフをまとめ、利用者一人ひとりの状況に合わせた看護を提供する体制を構築しているのです。

まとめ

 みなさんのステーションでも日々の業務の中で、ちょっとした何かを付け加えることでイノベーションが生まれているのではないかと思います。それは本当にちょっとしたことでなかなか気が付きにくいことかもしれません。訪問看護管理者はそうしたちょっとした変化にも目を向けることで、ステーションをより良い方向に持っていくことができる存在であると思います。

©︎2021合同会社manabico