本の紹介『組織開発の探究 理論に学び、実践に活かす』

目次

はじめに

 考えを深めたい時や、共通の話題で議論したい時に、フレームワークを使うことはないでしょうか。例えば、自ステーションの強み弱みをSWOTを使って分析したことがある人は多いのではないでしょうか。

 便利に使えるフレームワークですが、そのフレームワークを、誰が、いつ、どのような考えに基づき考案したのか、までを知っている人はあまりいないと思います。

GRPIモデルの源流を探して

 数多くあるフレームワークのひとつに、GRPIモデルというのがあります(今回のblogではGRPIモデルの説明は行いません)。便利に使っているのですが、このフレームワークを誰が、いつ、どのような考えに基づき考案したのかを私は知りませんでした。そこでまずwebで調べてみると、リチャード・ベックハードをいう人が考案したらしい、ということがわかりました。ベックハードの書籍は日本語訳されたものがあり、その本は入手することができました。しかし、GRPIモデルというのは出てきません。webで英語の記述をいくつか読むと、ベックハードの1972年の論文がGRPIモデルの元であるというような記述を見つけました。この論文を手に入れて読んでみても、GRPIなどはどこにも出てきません。ベックハードの本は古いものしか見つかりません。いったん手詰まりとなりました。

組織開発という言葉で道が開ける

 前置きが長くなりました。さて、どうしたものかと悩んでいるときに出会ったのが本書です。ベックハードは組織開発のコンサルタント経験も豊富であったという記述がキーになりました。

組織開発の探究 理論に学び、実践に活かす

 本書は500ページ近い大作です。組織開発という営みについて、その思想的源流から遡ります。そして、その哲学と実践が時代の変化とともにどのように変遷したのかを描いています。私は本書で書かれた1970年代までの組織開発の流れについてまでを読み終えています。ベックハードももちろん登場します。彼がどのような思想や哲学を背景として組織開発を実践していたかについて、自分の考えを深めることができました。

 本書でもGRPIモデルは出てこないのですが、このフレームワークの狙いは非常にベックハードらしい、という風に今は思います。

まとめ

 GRPIモデルというフレームワークの源流を探していたら、組織開発に出会いました。日本語で読める、組織開発について体系的に学べる本は他にはないのではないでしょうか。自ステーションの運営に悩みを持つ訪問看護管理者のみなさんには、本書は多くの気づきを与えてくれると思います。しかし、特効薬ではありません。本書はじわじわと効いてくる漢方のようなものではないでしょうか。

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