本の紹介『採用学』

目次

はじめに

 訪問看護師の採用を検討されている看護管理者さんは多いのではないかと思います。いい人がいないかを絶えず考え、あの手この手で募集者を増やそうとしている方も多いと思います。
 採用をしようと考えたときに、そもそも採用って何だろうか、という問いに出会ったときに役立つのが今回ご紹介する『採用学』です。

採用に「普遍解」はない

 本書は序章で「採用のやり方に唯一最善の解は存在しない」と述べます。採用をしたいと考えている訪問看護ステーションの置かれている状況や環境条件は違うのでその通りであると思います。付け加えると本書は大卒者の新卒一括採用を前提として書かれているので、訪問看護師の採用とは違う点が多いと思います。また、募集要項にこんなことを書けばいいとか、面接はこうやればよいとかの説明は本書には登場しません。しかし、参考になる点は多くあります。本書は、経営学が培ってきた「ロジック」と「エビデンス」を読者に提供することで採用をしようと思う会社が採用についての「具体的な実践能力を紡ぎ出すこと」を支援したいと述べています。

採用ってそもそもなんでするんだろう?

 本書では企業がなぜ採用するかについて2つの目的があると述べています。この2つについては訪問看護ステーションがなぜ採用をするのかについても同じであると言えると思います。以下の2点です。

・組織目標を達成するため
・組織の活性化のため
※組織を訪問看護ステーションと読み替えていよいと思います。

 直接的な採用の理由は、例えば人が辞めてしまったから、利用者が増えているから等かもしれませんが、よくよく考えてみるとこの2点であるということができると思います。この2つの目的達成のために採用をするのであれば採用というのはどのようなものなのかについての疑問がわきます。

採用ってどういうプロセスなのだろう?

 本書では採用のプロセスを、募集→選抜→定着の3段階で説明しています。募集とは、HPに求人を出すといったことです。選抜は、募集に応じてくれた求職者を面接するといったことです。そして、定着は求職者が入社してスタッフとなり、一人前に仕事をしている段階です。 
 採用というと、募集→選抜、という2段階で考えが止まってしまう場合が多々あるのではないかと思います。そこで定着も含めて採用を考えると、どういう募集要項を書けばいいのか、面接では何を聞けばいいのか、といったことにまで考えを巡らせるようになると思います。

おわりに

 本書の事例は大卒者の新卒一括採用を前提に書かれていますが、訪問看護師の採用を考えるにあたっても多くのヒントが本のそこかしこにあります。
 ご興味のある方は本書をぜひご一読くださるか、参考文献にあげた資料を読むことをお勧めします。

参考文献

服部 泰宏, 堀上 明, 矢寺 顕行(2016)採用研究の俯瞰と展望―我々は何を論じ,何を明らかにし,何を見てこなかったのか―, 経営行動科学, 28 巻, 3 号, p. 249-278,

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